マニュアルの業務が多い場合、ITを導入してシステム化することによって業務の効率化を実現できる部分は多いです。しかし、システム化しても業務改善が思うように進まなかったり、思ったより効果が実感できないということもまた多く、システム導入自体が失敗として以前のやり方に戻ってしまうこともあります。
では、システム化しても業務改善がうまくいかない原因はどこにあるでしょうか。自社の場合に照らし合わせて考えることで、今後の改善につなげられれば幸いです。
システム化は目的ではない
以前の記事でも挙げましたが、課題解決の手段としてシステムを入れるはずが、システム導入を進めるうちに、入れること自体が目的になってしまうことがあります。
システム導入の規模にもよりますが、システム化する範囲が大きいような場合は運用開始までの期間が長くなります。期間が長くなると、その間にシステム化は手段だったはずがシステムを入れることが目的に変わってしまいます。そうなると、システムを入れたら終了という意識に変わってしまい、運用後の定着まで目が届かなくなってしまいます。
システムを導入したらそこからが始まりです。推進の段階で責任者及び関係者は「なぜやるのか?」という目的を忘れないように、そして利用者にきちんと伝えることをしたいところです。
システムに期待を持ちすぎている
「システム化すれば今の業務がガラッと変わり、やりやすくなる」。システム導入をされる企業の方の中にはそんなイメージを持たれている方がわりと多い印象があります。確かに正しいのですが、間違いでもあります。
今抱えている業務上の課題をシステム化によって全て解決できるかというと、それはNOだと思います。システム化により実現できる部分とできない部分が当然あります。自社の要件をできる限り盛り込んだシステムだとしても、できない部分は発生します。そこを明確にして、特に利用者に共有しておく必要があります。つまり、できない部分を念入りに説明することが大切です。
システム化することで今までできなかったことができるようになります。それが改善目標全体の7割をカバーしたものだったとしても、残りの3割に対する説明が足りないと、「使いにくい」「聞いてない」「システム化の意味があるのか」という意見が出てくることになり、効果として出ている部分がまるで無いかのように言われることがあります。これらの意見はきちんと説明していた場合でも当然発生しますが、説明が無い場合は特に多く出ることになり、運用開始後の定着度にも繋がってきます。
「システム導入チームの担当者」と「実際の利用者」は別の場合が多いです。チームの方が理解していたとしても、実際の利用者は導入中のやり取りを知りませんので、新しい仕組みを入れる=画期的に変わる、と期待を抱いてしまうのは仕方がない部分でもあります。システム化に対する期待を抑えるには、はじめから多くの機能を盛り込んだシステムを導入するよりは、機能を限定して小さく導入して少しずつ改善を広げていくほうが効果があります。利用者側としても一度に覚えることが少なくてすみますし、結果的に抵抗感を抑えてシステムを利用していくことができます。
システムに機能を詰め込みすぎている
色々な改善をしたい場合、システムに求める要件は多くなります。要件の数に伴い機能も多くなりますが、多すぎるのも少し考えものです。
現状の業務ベースで考えていくと、要件に対して優先順位をつけたとしても「結局全部必要」となる場合があります。そのような場合、一旦システム化を無視して現状の業務を洗い出すことが必要です。システム化を考える前に、システム化せずにできることを議論します。
まずは「やらなくてよいこと」から議論を始めてみましょう。今までやっていた業務を無くすには、「なぜ今これを行っているのか?」「これを行わないと何が困るのか?」ということを改めて見つめなおす必要があります。「今までやっていたから」のように特段理由が無かったり、そもそも理由が分からないものが出てくるかもしれません。そのようなものは削るのに最適なもので、無くすことができないまでも、内容を削れるかもしれません。
発想方法としてはオズボーンのチェックリストも参考になりますので、是非活用してみてください。
導入後の振り返りをしない
「システムを入れたら必ず使うのだから、想定通りの効果が出るものだ」
このような考え方を持たれている場合、導入後の現場の状況確認や改善効果の検証をされないことが多いです。想定していた効果が出ていれば問題ありませんが、もし効果が出ていない場合、振り返りを行わなければいつまでたっても改善は望めないでしょう。新しいことをやろうと社内で議論し、システムを導入し、現状を改善しようとしています。システムを入れてからが業務改善の始まりですので、体制やKPIなどを立ててきちんと振り返りをしていきましょう。
業務改善が思うように進んでいない場合、大きく次の要因が考えられます。
システム面の要因
システム面の要因としては、「画面のここが使いにくい」「この機能がよくわからない」といった問題であったり、「ここをこうできないか?」といった改善要望かもしれません。要望の場合は数多く出ることが想定されますので、優先順位をつけて対応していくことが肝要です。
運用面の要因
運用面の要因としては、様々なものがあります。システム面の要因に比べて、運用面の要因により業務改善が進んでいないということがはるかに多いです。例えば、
- 運用ルール通りに入力されていないためデータが使えない
- 操作が分からないが誰に聞けばよいか分からない
- 集計結果が見れるがどの会議でも活用されていない
など、運用側の問題は多種多様です。
「導入前にシステム操作説明をして、業務フロー・業務ルールを説明して、開始日を説明する」ということを行えばすぐに運用に乗るということはあまりないです。運用後のチェックやフォローを定期的に行い、見直していく必要があります。責任者が現場を見る(+実際に利用者に質問してみる)というのは大きな意味を持ちます。
そもそもの問題
運用開始したものの、当初決めた業務の流れではやりづらい面が出てくるかもしれません。原因を分析をしつつ改善を繰り返していきましょう。kintoneなどを用いて、現状把握→改善案→試行→振り返り(現状把握)のサイクルを繰り返し回していく業務改善が中小企業には適しているかと思います。
まとめ
どのようなシステムやサービスであれ、PDCAのサイクルを回さない限り、システム導入による業務改善の効果は限定的になります。業務改善はシステムを入れれば解決というものではなく、繰り返し繰り返し行って徐々に効果が見えてくるものです。効果が出ない場合、その要因は単にシステムが悪いとは一概に言えません。一度システムを入れてその後の見直しや改善を放置しているようでは当初の目的を達成するのは難しいため、まずは現状把握をして振り返りをしてみてはいかがでしょうか。