業務の改善や業務効率化を実現するために、システムを導入して「見える化」を行うことがあります。しかし、システムを入れたにもかかわらず、当初の目的を達成できなかったり、いつの間にかシステム自体が使われなくなってしまったというご経験があるという人もいるかと思います。
なぜ「見える化」が失敗してしまうのでしょうか。それは、システム自体に問題があるのではなく、システム以外の部分に問題があるからです。
ここでは、システムによる見える化を進める上で陥りがちな4つの失敗ポイントについてご紹介します。
これを読めば、「見える化」の失敗を未然に防ぎ、継続的に活用できる見える化システムの導入・運用ができるようになるでしょう。
1.「システムによる見える化」の定義
「見える化」といっても範囲は広いです。ここでの見える化とは、次のようなケースとして想定としています。
- 今まで複数のExcelで管理していて個別に存在していたデータを、システムで一元的に集計し表示する「見える化」
- 社内のエクセルマスターによって属人的に作られていた資料を廃止し、システムによって誰でも作れ見れる「見える化」
- 今まで頭の中にあり「こうしたいが時間が無くてできない」というようなものを、システムによって現実化する「見える化」
- 日々のデータを蓄積して様々な切り口で集計・分析できるようにする「見える化」
2.見える化のよくある4つの失敗ポイント
よくある失敗ポイントとは、次の4つです。
- チーム(プロジェクト)体制後の運用が固まっていない
- 現場への落とし込みができていない
- 「見える化」システムへの入力に手間がかかる
- 「見える化」で作成されたデータが使われない運用
それでは、1つずつ見ていきましょう。
2-1.チーム(プロジェクト)体制解散後の運用が固まっていない
システムを入れるということは、通常やらない業務をするということです。そのため、専用チームやプロジェクトを作って推進していくことが多いです。社内にITやシステム関連の部署がある場合は別ですが、中小企業の場合は専門の部署があることは少なく、専門外だが推進していく役割を与えられるケースもあります。とりまとめとして色々な部署と調整をしながら行っていくということもあります。
その際にありがちなのが、「システムを入れて形になったから解散」となり、解散後の運用があいまいなままシステムを使うようになるケースです。
例えば、次のようなことは決まっているでしょうか。
- システム運用責任者が決まっているか。(プロジェクト推進責任者以外に担当が変わるのなら、誰にするか)
- プロジェクトにアサインされた人は、プロジェクト解散後も、プロジェクトで担っていた役割を継続するのか。継続しない場合、誰がその役割を担うのか。(例)問い合わせ先
- 運用後の効果測定は誰がどのようなタイミングで行うのか。(例)作業時間が1ヶ月でxx時間減ったなど
- 当初の見込みどおり運用されているかを誰が確認するのか。どのようなタイミングでどのように運用チェックをしていくのか。
もし決まっていないなら、そこまで決めた上で実運用に入るのがよいでしょう。特に、導入後は全て現場任せにしているような場合は注意が必要です。導入当初は現場も分からない点が多いため、なんとなくでデータをシステムに入れてしまうケースがあります。経営者や責任者がきちんとチェックする体制を取っていないと、使えないデータが見えるシステムが出来上がってしまいます。
見える化の一番の肝はデータの正確性です。その前提が崩れてしまうと、入力者は手間が増えるだけ、経営者はそれを見て何も判断ができない(もしくは間違った意思決定をしてしまう)という悪循環に陥ってしまいます。
2-2.現場への落とし込みができていない
2つ目は、現場への落としこみがきちんとできているか、ということです。
現場への落とし込みとは、
システムへのデータの入力担当者に対して、
- システムにそのデータを入力することの意味
- どのようなタイミングでどんな情報入れるのか
を理解するまで伝える
ということです。
見える化によって出力されたデータを使うのは経営者やマネージャーかと思いますが、そのための日々の元データを入力するのは営業担当など現場で動いている社員です。単にシステムに入れる方法だけを伝えてしまっては、見える化本来の目的が伝わらず、「なぜこれをやっているのだろうか」という疑問と、入力の手間への不満が募るが溜まることになります。きちんと背景と業務の流れ、操作方法を理解するまで説明することが重要です。ドキュメントとして残す(操作マニュアルを作るなど)ことは大切です。これは、過去記事(業務の見直しを行う際にまず行うべき3大ポイント)にも繋がる部分です。
導入では、見える化で出力された結果のほうに大きな注意が必要ですが、それを下支えするデータ入力へのケアが必要です。
2-3.システムへの入力に手間がかかる
3つ目は、見える化のベースとなるデータの用意やシステム入力自体に手間がかかる、という失敗です。
見たい形を実現するために入力の手間がかかる部分が出ることは多少仕方ない部分もありますが、今までに比べて多大にかかるような場合は問題です。いずれ業務自体が回らなくなり、結果としてデータが溜まらずにうまく活用できないという結果に繋がってしまうこともあります。入力の手間を軽減する施策をうつか、その改善が難しいのであればそれ以外の部分で何か減らすことができないかをセットで考えてみるのがよいでしょう。
2-4.「見える化」で作成されたデータが使われない運用
せっかく見える化として作成されたデータが業務上のどこにも使われないという失敗です。次のようなケースが該当するかと思います。
- システムを入れただけで満足してしまった。
- 見える化により作成されたデータを、どのような会議や場面で誰が使用し、どのような判断につなげるのかを明確にしていなかった。
- 見える化により作成されたデータを使ってはいるが、何の意思決定にも役立てられていない。
- 運用当初は使っていたが運用を継続していくうちに使われなくなった。
- そもそも見える化する必要が無かった。
次第に使われなくなるような場合、新しい切り口でデータを見えるようにするなどのシステム改修を入れる必要が出てくるかと思います。見える化によって見たい形というのは、時間の経過とともに変化していくものです。当初の形のまま使い続けられるほうが稀ですので、会社の実態や状況に応じてシステムも変化させていく必要があります
3.まとめ
見える化が失敗する原因の多くは、システム自体ではなく、組織や人によるところも大きいです。
「見える化すれば悩みが解決!」ということは決してありません。
導入後の運用、つまりシステムの活用部分に主眼を置いた体制の構築が大切ですので、この点を忘れないようにしたいですね。