住宅やアパート・マンションなどを主事業とするハウスメーカー・住宅販売業・リフォーム業・建設業・不動産業・工務店にとって、顧客の意見は営業活動においてとても重要です。特に、ファミリー向け一戸建ての建売住宅、注文住宅、アパート、マンションにおいては、住宅見学会や住宅展示場や完成見学会といったイベントを通して見込みとなるお客様との最初の接点が始まるため、顧客の意見を集めるために見学後にアンケートへの協力を促しているところが多いです。顧客アンケートを元に様々な分析を行い営業活動に繋げていくことが重要ですが、アンケートを手書きで行っている場合、紙の情報をExcelやシステム等に転記してデータ化し、使い始める前段を整えるということが必要になります。お客様アンケートの数が多い場合は転記作業の労力も大きいですが、転記自体は何も効果を生まないつまらない作業です。
そこで、顧客へのアンケートを手書きで行うのではなくシステム化することで転記作業を無くし、更に営業活動にも簡単に繋げていく事例をご紹介します。会社のホームページ(WordPressで構築されているサイト)とkintoneを組み合わせて活用することで、アンケートのWebシステム化と社内システムとの連携を実現することができます。
顧客アンケートを起点とした営業活動における住宅販売業が抱える課題
顧客アンケートを手書きで収集している場合の課題
アンケート用紙にペンで書いてもらっているような場合、アンケート結果を集計するためにExcelやシステムなどに転記作業をする必要があります。転記作業の量は、アンケート結果の枚数とアンケート項目数によって変わりますが、量が多いと作業時にアンケート結果を間違って転記してしまうという人的ミスが入る可能性もあります。また、アンケート結果をまとめたExcelから見込先のリストを作るような場合、さらに別の見込先用Excelに顧客情報部分を転記する作業が発生します。関数やリンクによってある程度は転記作業を減らすことも可能ですが、自動化に詳しくない場合は活用をすればするほど複数のファイルに転記するという作業がつきまといます。
顧客アンケート結果を共有する方法にも課題があります。Excelにアンケート結果をまとめているような場合、結果をメールで配信するというのは1つの手ですが、他のメールにまぎれて気付かなかったり、どれが最新なのか分からなくなる可能性もあります。サーバを用いて共有する方法もありますが、自社サーバを立てている場合は社外から確認できないという弊害があります。
顧客アンケートの営業活動への課題
顧客アンケートの結果をExcel等にまとめていても、営業活動にうまく活用できていないというケースがあります。例えば、アンケートに用意された質問を軸にして表やグラフにして分析結果を見えるようにしたはいいけれど、分析結果に対する議論をする場が用意されておらず、単に結果が見えるだけになってしまっていることがあります。
- 宣伝広告(CM、ラジオ、Web、メール等)のどこからの流入が多いか
- 自社がターゲットとする客層が来ているか
- 自社が推しているポイントを顧客もよいと思ってくれているか
などの気付きを得て次のアクションにつなげられていないようなケースが該当します。
別の課題としては、住宅展示会などに来ていただいた見込み客に対してその後のアクションが行われているのか把握できていないという問題です。アンケート結果から見込み客のリストを出すまでは出来たが、各見込み客に対してどう動いているのかマネージャーが分からなかったり、過去にどんな活動をしたのか履歴をたどるのが難しかったり、見込み客がアンケートではどんなことを回答していたのかすぐに取り出せなかったり、情報が分断していて効率が悪いようなケースが該当します。
課題の課題の検討
アンケートから営業活動までを見てみると、課題の課題として次のようなものが考えられます。
- 転記作業は手間。減らせるのならば極力減らしたいが、手段を知らない。
- 情報が分散。必要なため色々なファイルを作って転記したはいいが、ある情報から別の情報にたどるのに時間がかかっている。または、たどるための施策が取られていない。
- 報告が口頭のみの場合は、情報が蓄積されていない。そのため履歴をたどれない。
アンケート結果の転記作業を減らすことと合わせて、アンケート結果を営業活動に効率的に活かすことができないか。ホームページ(WordPress)とkintoneを用いた場合を考えてみました。
ホームページ(WordPress)×kintoneによるシステム化の改善例
顧客アンケートを手書きからWebシステム化する場合、Webアンケート専用のシステムを活用するというのは手段のひとつです。しかし、Webアンケート専用のシステムから営業活動に繋がる見込先のリストや活動履歴への連動を考えると、アンケート結果をExcel等に転記するという作業がおそらく発生するため、この転記作業を減らす方法を考える必要があります。
そこで提案するのが、ホームページをWebアンケートシステムとして使い、アンケート結果をkintoneに貯めるという方法です。どの会社でもホームページを持っている時代ですので、そのホームページを情報発信以外にも活用していこうというのがポイントです。
顧客アンケートのWebシステム化は、WordPress(ワードプレス)というCMSを使って構築されているホームページの場合だとプラグインが用意されているため簡単にkintone連携することが可能です。今回はWordPressで構築されているHPを活用した例にてサンプルを説明していきます。WordPressについては、以下サイトに解説が載っていますのでご参照ください。
WordPressって何?って人が3分でなんとなくわかる解説
HP(WordPress)とkintoneの連携イメージ概要
HP(WordPress)とkintoneを連携させて営業活動に繋げていくシステムの概要です。
ポイントとしては次の通りです。
- アンケート入力はタブレットやスマホから行ってもらう。
- アンケート結果から見込み先の情報を作成できる。
- 見込先の情報から活動情報を作成できる。
- 見込先の情報を見れば、アンケート結果や活動履歴をたどることが出来る。
ホームページのWebアンケート入力フォーム画面
紙のアンケート内容をWebアンケートに変更します。これまで使っていた質問項目そのままでも良いですし、アンケートからどんなアクションをしたいかを元に質問を見直しても良いかと思います。お客様にはタブレットを渡してその場で入力してもらっても良いですし、タブレットが無い場合はQRコードを事前に用意しておいてスマホで読み込んでアンケートページを開いていただき回答してもらう方法も良いかと思います。
質問を見直すような場合、次のポイントで見直すと参考になるかと思います。
アンケート全般
選択形式(ラジオボタン、チェックボックス、リストボックス)を基本として、自由形式の入力は極力少なくするのが良いかと思います。住宅見学会などに来店いただいた方にアンケートをお願いしますので、1つ1つが自由形式で回答させる形では、入力するお客様の手間がかかります。よって、簡単に行うことが出来る選択形式がベターです。自由入力が多いとその分時間もかかりますし、適当に回答したり回答自体がもらえなかったりする可能性を回避する意味もあります。
基本的な質問
お客様の基本情報です。住宅見学会のような場合、あとで連絡を取れるようなものに絞りましょう。
- 名前
- 電話番号
- メールアドレス
- 住所 ※都道府県と市区町村とそれ以外で入力項目を分けておくと、アンケート結果アプリで分析に使えます
分析用の質問
アンケート結果を元にどんなアクションに繋げたいかを考慮して質問を決めます。例としては次の通りですが、他にも色々と考えられます。
- 年代(20代前半、20代後半、30代前半、30代後半、40代前半、40代後半、50代前半、・・・など)
- 知ったきっかけ(どこからの流入が多いかの分析用)
- 競合調査用の質問(他にどこの会社の見学会を見たか等)
- 意欲(6ヶ月以内に決める予定、未定、などの住宅購入に関する意欲)
- 見学をしての感想の質問(5段階評価などを用いて入力しやすいように)
今後の情報発信用
- お役立ち情報をメール等で連絡してよいか
- アンケート結果を匿名でホームページで紹介しても良いか
kintoneのアンケート結果アプリ
ホームページで顧客に入力してもらったアンケート結果がこのアプリに蓄積されます。質問項目を軸にグラフ表示をすることで、視覚的に結果を知ることができます。この結果を元に
- 宣伝広告の見直し
- ターゲット層と宣伝対象の一致度
- 自社の強みとの一致度
などの振り返りを行い、自社のアクションにつなげて行きます。振り返りのタイミングは運用で決めておくとよいですね。
また、アンケート結果アプリに、見込先を登録するアクションボタンを追加しておくと、見込先情報を作る際の転記を減らすことが出来ます。「見込先を登録する」ボタンをクリックすることで、見込先アプリに名前、住所、電話番号、メールアドレスなどの基本情報がコピーされた状態で登録画面が開きますので、保存ボタンを押せばすぐに見込先の登録を完了させることが出来ます。
kintoneの見込先アプリ
顧客情報を管理するアプリです。名前などの基本情報以外に、営業担当や営業時に確認する内容(趣味、住宅に望む要素等)を格納する項目を用意しておけば、営業担当以外も顧客の嗜好を把握することが出来るようになります。
また、営業活動を登録するためのアクションボタンを追加しておくと、マネージャーが営業活動を口頭で確認する手間や過去の振り返りに活用できます。「営業活動を登録する」ボタンをクリックすることで、営業活動アプリに自動的に顧客名ががコピーされた状態で登録画面が開きますので、日付や活動内容を入力して保存ボタンを押せばすぐに登録を完了させることが出来ます。
営業活動履歴やアンケート結果は関連レコード機能を使うことで、見込先アプリを見るだけで関連付けて参照できるようになり、営業フォーローアップに役立てることが可能です。
kintoneの営業活動アプリ
営業担当毎の日々の活動がこのアプリに溜まるため、営業担当ごとの月の活動状況の集計や、見込先に対してのアクション回数などの集計をすることが出来ます。この情報を元に、営業担当に対して動きが足りない見込先への活動を促すといったやり方も可能になります。
ホームページコンテンツへの反映
WordPressでホームページを構築すると、自社で情報発信をすることが簡単に行えます。ホームページに来ていただいた、まだ見ぬ見込先へのアプローチのために、住宅展示会に来ていただいた方のアンケート結果の一部を公開するようなコンテンツを設けてみるのも良いかもしれません。顧客アンケートは自社の活動に繋げることをメインに行うものですが、ホームページを通してお客様への生の声を発信することにも活用することができます。
まとめ
データを入力・転記するというのは手間がかかる作業である反面、そこから活動がスタートするため重要な作業です。ホームページ(WordPress)とkintoneを組み合わせることで、入力の手間を減らして次のような改善を狙うことが可能です。
- ホームページを対社外への用途以外に、対社内用(社内業務システムへの入力フォーム)としても活用できるようになる。これにより紙アンケート結果の転記作業を削減できる。
- アンケート結果の分析をkintoneで行い、今後の広告やターゲットの見直しに活用できるようになる。また、アンケート結果は営業活動以外にもホームページのコンテンツとして集客ネタとしても活用できる。
- アンケート結果をkintoneアプリに自動登録することをきっかけに、kintoneで見込客リストや営業活動との関連付けすることで、一連の営業活動の流れを作ることが出来る。
福島県本宮市に拠点を置く弊社では、ホームページからの問い合わせをkintoneに連携してデータを蓄積する形で利用しています。このホームページ×kintoneの連携は、顧客アンケート以外の用途でも応用が色々と効きそうですので、活用のアイディアを広げて業務改善に繋げてみてはいかがでしょうか。