業務をシステムに合わせる?システムを業務にあわせる?迷った時の考慮ポイント

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現在行っている社内の業務をシステムを活用することで改善しようとする際に、

システムを業務に合わせる」のか「業務をシステムに合わせる」のか

どちらを選ぶべきなのか迷うことがあります。どちらもメリット・デメリットがあるため、すぐに決めることは難しいです。さらに中小企業の場合だと、

  • これまでエクセルでの運用で行っていたがキャパオーバーになりつつあるため初めてシステム導入する
  • 担当者がシステム選定やシステム導入自体初めて

といったケースもあり、どこから手をつけて判断をしていけばよいか分からないということもあります。

システム導入はコストがかかるものであるため、成功させたいものです。そこで今回は、中小企業においてのシステム導入をする上での悩み事である「システムを業務に合わせる」のか「業務をシステムに合わせる」のか、について、迷った時の参考となるポイントをお伝えします。これを読んで、自社のシステム利用の判断の参考にしていただければ幸いです。

システム導入の種類

システムを用いて改善を実施しようとする場合、大きく分けて次の2つの方法があります。どちらを選んだとしても、「システムを業務に合わせる」のか「業務をシステムに合わせる」のか、の悩みは発生しますが、まずはこの2つを理解しておきます。

パッケージシステム・クラウドサービス(SaaS)

複数の機能がパッケージとして用意されている製品のことを指します。「初期費用+年間保守費用」で利用できる製品や、「初期費用は無料で月額費用(多くはユーザ単位)のみ」で利用できるクラウドサービスなど、様々なものがあります。既に用意されている製品・サービスの中から、自社に必要な機能が揃っているものを探し、機能比較し、選定します。用意されている機能では足りないような場合、カスタマイズをいれることで機能追加できるものも製品の中にはあります。

社内の担当者は、まず良さそうな製品を探す必要があります。様々なものがありパッケージ製品・クラウドサービスを探すのが難しそうな場合はシステム導入サポートを行っている会社に依頼すると良いでしょう。

パッケージシステム・クラウドサービス(SaaS)を選んだ場合、「業務をシステムに合わせる」ことが基本になります。

スクラッチ開発

1からシステムの全てを開発することを指します。システムを1から作るため、自社の要件・要望を盛り込んだシステムを作ることが可能です。しかしその分、システム開発にも工数がかかるため、費用が多くかかるという点があります。

社内の担当者は、システム会社の選定をする必要があります。システム開発を行っている会社に依頼することで自社独自のシステム構築を実現することが出来ますが、要件やシステム開発会社の得意分野によって出来る・出来ないが分かれます。数社の話を聞いて判断します。

「システムを業務に合わせる」ようにしたいという要望が強い場合の多くは、こちらを選択することになります。

システム導入したとしても変えたくない業務の確認

システム導入することは、多かれ少なかれ「業務をシステムに合わせる」という部分が発生します。そのため、「この業務だけは絶対今のやり方を変えたくない」という業務がある場合、なぜ変えられないのか・変えたくないのかを整理することが大切です。

  • 今までのやり方が慣れているから
  • 新しいことを憶えるのが大変
  • 特別な業務を行っているから、パッケージ製品やクラウドに合わせるのは無理
  • 今までより大変になるのは嫌

様々な理由があるかと思いますが、それが本当に納得できるものかを確認します。声の大きい人の意見に流されないで見極めをしていく必要があります。

判断時の5つの考慮ポイント

「業務をシステムに合わせる」のか「システムを業務に合わせる」のかを決める場合、システム導入の種類(スクラッチ開発 / パッケージシステム)と合わせて、次のポイントを総合的に見て判断するとよいでしょう。このほかにも考慮すべきポイントはありますが、まずはここで挙げたポイントを抑えて、どのようにしていくかの判断に繋げましょう。

目的(何を実現したいのか)と必要な機能

システムで何を実現したいのか目的をまず確認します。目的があった上でどのような機能が必要なのかが決まってきます。システムに求める要件(機能)を洗い出して優先度をつけた上で、パッケージシステム・クラウドサービスを活用することで要件を満たせるのか、スクラッチ開発をするのか判断をします。

パッケージシステム・クラウドサービスを活用する場合、機能としては用意されているけれども、使おうとすると

  • 現状業務と流れが変わってしまう
  • 現状出来ていたある部分ができない

ということが発生しますが、これはパッケージシステムを利用するに当たっては当然な部分でもあります。現状とやり方が異なる部分は「業務をシステムに合わせる」という運用の変更が必要です。カスタマイズできる場合もありますが、極力はパッケージで用意されているやり方を踏襲したほうがよいでしょう。パッケージシステムの機能と共に、パッケージシステムを利用した場合の業務の流れ(運用の変更点)も考慮に入れながら、業務を変える必要があるポイントも整理していく必要があります。

一方、スクラッチ開発を行えば全ての業務において「システムを業務に合わせる」ことが出来るのかというと、そうではありません。システムの制約的なところであったり、実現可能性であったり、今までと同じことが出来ない部分というのは出てきます。特にExcelで行っていた事を全てシステムで実現したいというのは難しい部分も多いですので、出来ないところは今までとやり方を変える必要があります。

予算

システムにかけられる予算を確認します。大きくは初期費用とランニング費用の2種類に分けられますので、どちらにどれぐらいかかられるかの目安は把握しておきます。

予算が限られているような場合、「システムを業務に合わせる」だけの対応を取れないため、「業務をシステムに合わせる」ということが必要です。

予算を気にしなくて良いような場合、その資金を元に「システムを業務に合わせる」ための機能追加や開発をいれることが出来ます。

納期(期限)

運用開始までの期限を確認します。納期は他のポイントとのトレードオフな要素が大きいですが、納期厳守でずらせない場合、納期までの残り日数で考えていきます。

期限が短く余裕が無い場合、全ての要件を満たすことは難しいため、パッケージシステムを採用して「業務をシステムに合わせる」ことをするのが良いです。フェーズ分けなど段階的に導入していくなどを合わせて考える必要があるでしょう。

期限が長く余裕がある場合、他のポイントで判断をします。

経営者の意思・やる気

「システムを業務に合わせる」のか「業務をシステムに合わせる」のかは、経営者(責任者)の意思による部分が大きいです。これはシステム導入に当たっての方針のようなもので、明確に打ち出していたほうが担当者や関係者も判断を迷いません。社内調整で意見の食い違いが出て収集がつかない場合の判断材料として使います。明確に決まっていない場合、どちらの方針なのかを責任者に確認するのもいいでしょう。

社内の運用調整

「システムを業務に合わせる」のか「業務をシステムに合わせる」のかは、担当者の権限や意見を通せるかどうかにかかる部分も大きいです。

「システムを業務に合わせる」と言う結論に至るには、次の2つがあります。

  • 必要だから「システムを業務に合わせる」
  • 運用調整が出来なかったから仕方なく「システムを業務に合わせる」

特に担当者の権限が小さいような場合、運用調整をしても権限のある人の意見を聞かざるを得なくなり、どうしても業務をシステムに合わせなければならない部分において

  • 今までと同じにすべきだ
  • 今までと変えたくない

というような合理性の無い意見・現状しか見ていない意見に流されるまま「システムを業務に合わせる」ための無理な機能追加をする方向に進み、コストもその分かかってしまうことがあるかもしれません。

担当者には適切な権限を与えるか、権限があり業務を理解している人をアサインする必要があります。業務のやり方を変えられないのはなぜ必要なのか、システム導入の目的とセットで運用調整をしていく必要があります。

また、システムを入れることで「ある業務において今までより工数が増える」部分が発生することがあります。関連する部署では今までより工数が増えるため反発も大きいでしょう。なぜ増えるのか、その分どんなメリットが他にあるのかも踏まえて、現場には理解をしてもらう必要がありますので、システム導入はこの運用調整に大きな労力がかかります。

どう考えていくか

「業務をシステムに合わせる」のをベースにしたほうが、中小企業におけるシステム導入はあっていると思います。システム導入するということは、次のことと同義と考えるとすっきりするかもしれません。

  • システム導入すると業務の変更(運用の変更)は必ず入るものである。
  • システム導入後も今までと同じやり方を続けるのは無理である。
  • る部分で工数が増えるかもしれないが、その他の部分でそれ以上に減っていることを忘れない。

第3の選択肢:クラウドサービス(PaaS)の利用

パッケージシステム・クラウドサービス(SaaS)、スクラッチ開発以外の方法として、PaaS型クラウドサービスを利用すると言う方法があります。弊社でも取り扱っているkintoneなど、Webデータベース型業務アプリ構築クラウドサービスを利用するというものです。

参考:自社に合った業務アプリケーションは自社で・自分で作る方向へ

  • 標準機能としてログイン機能・権限分離機能などが既に用意されているため、その部分を開発しなくて良く、必要な機能の開発に集中できる。(スクラッチ開発は1からなため必要な機能は全て作成)
  • パッケージシステムやクラウドサービス(SaaS)に比べてカスタマイズ性がある

例えばkintoneを利用することは、次のメリットがあります。

  • 用意されている機能を組み合わせて、自社に必要な機能(アプリ)を作ることが出来る
  • スクラッチ開発やパッケージシステムへのカスタマイズに比べて工数がかからない
  • アプリ作成、アプリ作成後の変更を自社で行うことが可能(ドラッグ&ドロップで画面作成)
  • 標準機能にはない機能の追加も可能(カスタマイズ、プラグイン)

用意されている機能を組み合わせてシステムを開発するため、何でもできるというわけではありません。(スクラッチ開発がなんでも実現できるとするならば、半スクラッチ開発は60~70%程度かもしれません)しかし、自社の要件によってはマッチする部分も大いにありますので、検討時の候補になると思います。

kintoneなどを利用することで、業務に合う形にシステムを構築できるという部分が、パッケージシステムを導入することに比べて増えます。

まとめ

現在においてはシステムは所有から利用へ進んでいますので、パッケージシステムやSaaSなどのクラウドサービスを活用していく流れがますます大きくなります。パッケージシステムやSaaS型クラウドサービスを利用するには業務を変えていく必要がありますので、中小企業においては「業務をシステムに合わせる」を基本として考えたほうが良いでしょう。

また、自社の業務システムを自分で作れるサービスも出ています。これらを活用していくのもまた一つの手ではないかと思います。