日報の運用をされている中小企業は多いです。その種類は様々で、営業日報、作業日報、現場日報、工場日報、店舗日報、運転日報、添乗員日報、工数管理日報など多岐に渡ります。
単純にメールで毎日上司へ報告する、エクセルやワードで作成されたテンプレートファイルに各自記入する、手書きで紙フォーマットに記入するなど、報告の方法は様々ですが、システムを使った報告では無い場合においては次のような運用上の課題が出てくることがあります。
- 何にどれぐらい時間がかかっているのか管理したい。日々の報告は把握できるが、週や月毎の集計が大変でやりきれない。
- 社員が何をやっているかもっとわかりやすく把握したい。
- せっかく書いた日報を他社員への情報共有にも使いたいが、うまくいかない。過去の日報から探すのに手間がかかる。
- 自社に戻らないと日報が書けない。
- 運用自体がうまくいっていない。単に書いているだけになっている。
これらの問題を解決するために日報システムの導入を検討することもありますが、単に現状の日報運用のままシステム化してもうまくいかない可能性が大きいです。そこで今回は、kintoneアプリでシステム化する場合を例に、まず日報の目的を整理をするところから考えてみたいと思います。
日報の目的の再確認
まずは一度立ち止まり、日報の目的を再確認してみましょう。目的は各社で様々ですが、例えば次のような目的があるかと思います。
- 現在の仕事の内容を把握したい。
- フィードバックすることで部下の成長を促したい。
- 日報を書くことにより気付きや発見を促したり、振り返りの習慣を身につけさせたい。
- どの作業にどれぐらいかかっているか把握したい。
- データベースとして集めることで、今後に活かしたい。
- 社員の日報を公開・共有することで、相互作用に繋げたい。
現状の日報運用の振り返り
次に、現状の日報運用を振り返ります。今現在どのように行っているのか、運用上何が課題なのかを洗い出します。ここでは例として、Excelフォーマットに日報を入力してメールで上司に報告する、ような運用を例に取り上げてみます。
現状の運用整理
- 日報は所定のExcelフォーマットに記入後、共有フォルダにファイルを保管する。(共有フォルダには個人名+月毎でファイルを作成)
- 日報を書いたことをメールで上司に連絡する。
- 上司はメールが届いたらファイルを見て内容を確認後、部下にフィードバックする。
- 上司は各社員のファイルからデータを抜き出して、どの案件にどれぐらい時間がかかっているかを集計する。
運用上の課題
- 何を報告すればよいのか分からない(フォーマットが自由形式の場合は特に)。そのため、報告者によって質がバラバラ。
- 部下から毎日報告が上がってくるが、上司が確認しきれないためフィードバックが出来ない。
- 部下は日報を書くこと自体に時間がかかっているものの、報告しても何も反応がないため、ただ書いているだけになっている。
- 各社員の日報ファイルの集計に時間がかかる。集計に時間がかかるわりに、集計結果をうまく活かせていない。
- 会社に戻らないと日報を書けない
ここで見つかった課題は運用を変えることで対応できるものもあれば、システムを入れることで効率化できるものもあります。システム導入で全て解決するわけではないという点を、再認識しましょう。また、特に日報においてはフィードバックが重要です。成長を促す目的の日報でフィードバックできない状態が続いているようであれば、原因を分析して対処することが必要です。日報自体をやめるという選択肢もあるかと思います。
日報運用改善時のポイント
本来の目的、現状、現状の課題が見えたところで、どうすればよいかを考えていきます。ここではシステム化する上で注意したい点をあげてみました。
単位
日報というと一人ひとり作成するイメージをパッと持たれますが、本当に人毎に作る必要があるかを検討します。例えば、報告の単位としては次のようなものがあります。
- 人
- チーム
- 部署
- 店舗
日報の内容や報告先にもよるかとは思いますが、目的と照らし合わせてどれが良いかを再度考えます。現場の現状と照らし合わせて考える必要があります。
間隔
「日報」なので毎日行うものという概念があるかと思いますが、一旦振り返りましょう。例えば次のような間隔があります。
- 日毎
- 週毎
- 月毎
- イベント毎
週報や月報などでも目的を達成できるか考えて見ましょう。毎日の動きに変化が少ないような業種の場合、週にしても問題はないかと思います。運用を回すことをまず考えて、当初は週単位、定着してきたら日単位にするなど段階的にするのも一案です。
報告内容
特にフリーフォーマットで運用している場合、報告させたい項目を分割するのが良いでしょう。フリーフォーマットは自由に記入できる反面、何を書くかの意思統一がされていない場合は各社員によって内容や質がバラバラになります。目的と照らしあわせて分割したほうが、報告者側も混乱が少なく書きやすいです。
報告内容としては例えば次のようなことがあるでしょうか。自社の目的にそった内容決めをします。
- 今日の予定と実績
- 良かった点(できたこと)
- 課題点と改善策
- 明日の予定
- 連絡事項
- どの案件でどれぐらい時間がかかったか
各内容の記入例とポイントもあわせて用意しておくと、社員毎の報告内容に統一感がでます。
集計内容
日報内のデータを集計して何に使うかを考え直しましょう。あればよい程度の資料用の場合は、いっそ集計自体をやめることも一案です。活用が無い集計は時間と労力のムダです。
運用自体
まずは目的を再周知しましょう。長く続けていると目的は忘れやすくなり、単に書くだけになってしまいます。個人へのフィードバックは必要ですが、気になる日報を部署内で共有するような運用を作るのもいいですね。システムを使うことで自動的に通知させるということも可能です。
kintoneで日報アプリを実現した場合
kintoneアプリストアでは「日報」というキーワードが常に人気検索ワードに入っています。それだけ日報に関する悩みを持つ会社が多いことが伺えます。先に挙げたとおりで、目的とポイントを考慮してアプリを作成します。アプリストアの日報をベースに例を挙げます。
業務日報
一番シンプルな日報で、日ごとに報告するスタイルです。この例ではほぼフリーフォーマットですが、項目を分けてもいいですね。また、日報に対してコメントが入っていますので、過去の日報を見た際にどのようなフィードバックがあったのかも合わせて確認が取れます。
運転日報
運送業など車をメインに事業を行っている会社用の日報です。先ほどの業務日報とは異なり、テーブルを使うことで時間単位に入力するスタイルです。この例では、出庫時・入庫時のメーター、走行距離など後で集計につかえそうな項目も入っているのがポイントです。この項目をグラフ表示させることで、集計作業は自動化されます。
営業日報
運転日報と同じような形式ですが、この例ではまず部署と上司が入っています。プロセス管理にすることで申請された際に自動的に上司に飛ばす形を実現しています。また、テーブルと計算フィールドを使うことで、日時訪問数を自動的に計算して入力の手間を省いています。この日報だと、例えば部署毎の訪問数集計、訪問先ごとの訪問数集計、個人+訪問数毎の日々の活動推移(折れ線グラフ)など、集計の幅は多く広がると想定されます。
工場日報
こちらは人単位ではなく部署単位の報告形式の日報です。どの時間に誰が何をしたのかを確認することが出来ます。報告事項に複数入力していますが(接着異常、ライン停止、検品、復旧作業など)、良く使うほう国内用は別フィールドでリストボックスやチェックボックス形式にしておくと、集計時にその条件での絞り込みをすることが可能になります。
追加の改善ポイント
キントーンの場合は自由度が高いため、自社が押さえるべきポイントにあわせた日報アプリを構築することが出来ます。kintoneは「残す+集計する+通知する」が可能ですので、「集計する」「通知する」の機能を取り入れることで、更に日報の活用の幅が広がると思います。一例を挙げてみます。
- 社員アプリに日報アプリを表示する関連レコードを追加(紐付けのキーは日報アプリの社員名と社員アプリの社員名)することで、社員アプリを見れば関連する日報を確認できるようにする。
- 社員アプリに日報新規作成のアクションを追加することで、社員アプリから日報作成が出来るようにする。
- 案件アプリに日報アプリを表示する関連レコードを追加(紐付けのキーは日報アプリの案件名と案件アプリの案件名)することで、案件アプリを見れば関連する日報を確認できるようにする。
- 日報アプリに個人メモ用フィールド(例えば、備忘録、重要、再確認など)を追加し、個人で過去日報の振り返りをする際に条件指定で探しやすくする。
- 日報アプリに共有用フィールド(例えば、全社共有、○○チーム、○○部署など)を追加し、共有用フィールドに設定がある場合はその内容に応じて自動通知する処理を入れる。(共有の自動化)
- 日報アプリに特定項目での集計グラフを条件登録しておく。クリック操作ですぐ集計結果が見れるようになる。
- 日報アプリに社員別の提出状況確認用グラフを条件登録しておく。提出されていない項目がすぐ分かる。
- 日報に対して上司だけではなく、その上の方(例えば社長)も不定期でコメントするような運用を入れる。社長が見ているという意識がつくためきちんと書く姿勢が出るのと、普段接点が無いような場合は新鮮味が感じられる。社長側も同様で社員を理解する。
まとめ
単に日報といっても、色々な種類があります。まずは日報の目的に立ち返り、その目的を実現できる手段を選択しましょう。